重要文化財「木造千手観音坐像(もくぞうせんじゅかんのんざぞう)」を田尻総合支所で鑑賞しよう

宮城県大崎市田尻地域にある田尻総合支所内の観覧室では、木造千手観音坐像という貴重な仏像が一般公開されています。この像は、平安時代末期に作られたとされ、2017年に国の重要文化財に指定された歴史的な作品です。地域で守り伝えられてきたこの貴重な文化財は、地元の人々や訪れる観光客にとって大変重要な存在となっています。

木造千手観音坐像の特徴と歴史

「木造千手観音坐像」は、明治初期に廃寺となった小松寺(大崎市田尻小松)の本尊として長い間祀られてきた仏像で、平安時代末期(12世紀後半)に制作されたと考えられています。その作風が、平泉の中尊寺金色堂に安置されている藤原基衡関連の仏像群と似ていることから、平泉の寺院で造仏に携わった仏師によって作られたとされています。
特徴的なのは、二重まぶたの目と、髪を背面でたわませて結い上げる独特の髪型です。これらの特徴は、国内では非常に珍しく、東北地方の仏像製作の歴史を知る上で貴重な資料となっています。像の高さは約98.8cmで、朴材寄木造で作られています。

木造千手観音坐像の姿

この観音像は、十一面千手観音像であり、千の手を持ち、目を多くの方向に向けていることで、すべての苦しみを見逃すことなく救済するという信仰の象徴です。顔は、頭部と本面に二段に配置された10面の顔を持ち、これに加え、合計で11面の顔を持っています。また、42本の腕のうち、合掌する手以外は小ぶりであり、神聖でありながらも静謐な美しさを感じさせます。
興味深いのは、頭髪が舌状に垂れ、二重まぶたの目という唐代様式を取り入れたデザインで、国内では非常に珍しい特徴を持っています。また、両踵を隠す表現も、当時の仏像には珍しいもので、非常に高い技術が感じられます。

脇侍(きょうじ)像

この千手観音像の両脇には、不動明王立像と毘沙門天立像が配置されています。これらの脇侍像も、千手観音像とほぼ同時期に作られたとされ、非常に貴重な一群を成しています。この3体の仏像が、現在、田尻総合支所内の観覧室で一般公開されています。

修復と文化財の保存

この千手観音像は、東日本大震災(2011年)で大きな被害を受けたものの、その後、京都の「美術院国宝修理所」で修復作業が行われました。この修復過程で仏像としての価値が再確認され、2017年に国の重要文化財として指定されました。その後、大崎市が管理団体となり、より適切な管理のために2020年10月から田尻総合支所内の収蔵庫で保存・公開が始まりました。

重要文化財「木造千手観音坐像」の公開情報

  • 公開時間:午前9時~午後4時
  • 休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始(12月29日~1月3日)
  • 観覧料:無料
  • アクセス
    • JR東北本線「田尻駅」から徒歩約5分
    • JR東北新幹線「古川駅」から車で約20分
    • 東北自動車道「古川インターチェンジ」から車で約30分
  • 住所:宮城県大崎市田尻沼部字富岡183-3 田尻総合支所内

観覧に関するお願い

  • 観覧は無料ですが、密を避けるため、10人以内での入室をお願いしています。
  • 予約や事前連絡は不要ですが、見学者が多い場合は順番を待つことがあります。
  • 文化財の管理と保存のため、定期的に検査が行われることがあります。そのため、非公開日については予め確認をお願い致します。

地元で守り伝えられた文化財

「木造千手観音坐像」は、地元のお薬師様文化財保存会によって見守られてきました。地元の人々にとって、これは単なる文化財ではなく、地域の信仰の象徴でもあります。長い年月を経ても、地域で大切に守られ、修復と管理がなされていることにより、私たちはこの貴重な文化財を今日に至るまで鑑賞することができるのです。
最後に
大崎市田尻総合支所で公開されている木造千手観音坐像は、平安時代の仏像として非常に重要な意味を持つ文化財です。地域の人々に長く守られてきたこの貴重な仏像を、ぜひ足を運んで実際にご覧ください。その美しさと歴史的な背景を通して、私たちは過去と未来を繋ぐ大切な文化財を深く理解することができるでしょう。

 

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